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5500℃-01
はんなは枕の下の金属──手錠を取った。すでに掴んでいる鞠佳の右手首にかけ、そうして医療用のベッド──とはいってもかなり旧式の、頭側と足側が金属の櫛のようになっている──の櫛の歯、溶接された金属の桟にもう片方の手錠をかけて拘束した。
そしてベッドから軽捷に飛び退いた。
鞠佳は一瞬で理解したが、遅かった。
はんなは鞠佳を見つめながら、ホテルの小さなテーブルの裏を手探りする。拳銃、コルト社のガバメントM1911A1がガムテープで留められていた。
はんなはガバメントの初弾が薬室に入っているかスライドを引いて確認し、鞠佳へ向ける。
「動かないで、種村鞠佳──いや、春日井麻里。人類純血保護機構は知っているわね。そして、岡井妙子のことも──」
春日井麻里の本名を持つ吸血鬼はベッドに繋がれ、少しもがいて動きを止めた。銃を構えるはんなをじっと見つめている。
──ええ、覚えているわ。あなたは安原一子さんね。あなたにも悪いことをしたなと思っている。
「覚えてくれていたんだ。こんなとき、アニメみたいに整形前の顔にぺろんと戻れればいいのだけど」
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