Chemical-02

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Chemical-02

「……ありがとう」 「ちょっと休んでいきなよ、そんな恰好じゃ帰れないだろうし」  鞠佳はすぐ前にあるロルカというバーを指さした。  女の子と鞠佳がロルカの中に入ると、常連客の一人が、さすが五番街の用心棒だねえ、と感心した口調で鞠佳の格闘スキルを褒めた。  ロルカのママは一瞬、ぎょっとした顔で彼女の惨状を見た。 「キッチンで手当てをしてあげて」  鞠佳は女の子を厨房へと肩を貸しながら導いた。  鼻血はまだ流れている。 「ウェットティッシュは持ってる?」  またも左右に首を振られた。 「ちょっとファミマに行ってくる。近くだからすぐ戻るよ」  鞠佳は五番街にあるファミリーマートでウェットティッシュや裁縫セットなどを買って戻ってきた。  凝固しつつある鼻血を綺麗に拭いてやって、彼女のブラウスの裾に留められていた予備のボタンを外し、とりあえずは第二ボタンだけでもつけてやった。  ウェットティッシュで拭いた彼女の鼻血を、捨てる直前に眼を盗んで鞠佳はぺろっと舐めた。  ──ケミカルだ! と鞠佳の心は躍った。
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