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Chemical-06
……やはりケミカルね、と鞠佳は確信した。今夜はママの冗談どおり、全部をおごりにしてもいいかもしれない、と思った。
鞠佳は全身の血管が波打つのを感じた。……ケミカルの中でもかなりの上物よ、このはんなって子。
「ねえ、鞠佳ちゃん、お勧めのメニューある? それをまずいただきたい」
「錬金術だけは飲んでおきな!」
常連の一人がはんなに声をかけた。
カクテルなの、しかも鞠佳のオリジナルよ、とママ。
錬金術は、ドクター・ペッパーをウォッカで割り、シナモンスティックでかき回しながら飲むカクテルだった。じゃあそれを、とオーダーする前にもう鞠佳が作りはじめている。
──なら、食べるものはオリーブ・ハラペーニョでもいかが? ピリ辛で錬金術に合うわ、とママ。
ママも鞠佳も嬉しそうにはんなを見ている。常連のお客たちも。
「美味しい」
ロルカの店内、全員がうんうん、とうなずいた。
そのあとは、カウンター席とはいっても、常連客たちがはんなとしゃべりたいがために、交代ではんなの隣に来る。
はんなもそんなお店の空気を好ましく思っていた。ほろ酔いで編集者や駆け出しのジャズ・ピアニスト達ととりとめのない話を楽しんでいる。
午前五時を回り、常連客たちも名残惜しそうに帰っていく。
はんなは洗い物やお掃除などを手伝った。
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