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Chemical-08
ゴールデン街ではよくあることらしく、鞠佳は別のお店のお手伝いをはじめた。はんなはママの勧めるままロルカで仕事をするようになった。
お店を閉めるといつも花園神社前で待ち合わせ、そのままラブホテル街へ向かう。
そんな日が続いて、鞠佳は自分の正体を明かした。
「はんな、メンタルの病気を患っているのね?」
どうしてわかるの、とはんなは訊ねた。
「最初にロルカへ来た日のこと覚えている? 鼻血や唇の切れたところから流れた血、ちょっと舐めさせてもらっちゃった──これは向精神薬を常用している血だってね」
「血の味でわかるの?」
ほら、聖パルーシア学園卒じゃない。特別枠よ──吸血鬼の。
そっか、とはんなはさほど驚きもしなかった。
「わたしの血、吸いたい?」
鞠佳は頷いた。
鞠佳とはんながまだ聖パルーシア学園に在籍中ならとにかく、今は吸血鬼に血を吸われても吸血鬼の属性が感染するのを完璧に防ぐ薬品が開発されている。
「もっと早くに言ってくれればよかったのに」と、はんなは笑った。そして、鞠佳をどぎまぎさせるようなことを平然と口にする。
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