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地下にある鉄扉の一つを開け、白いLEDランプが冷たく点る、ほとんど人が訪れることのない記録保管庫に、ふたりはいる。
キャビネットの林の一番奥、部屋の隅にひっそりと、大きな身を隠すように置かれた鈍い鋼色の箱がひとつ。モルグにあるようなその引き出し式のロッカーの前で博士は立ち止まると、小さな鍵穴に古い鍵を入れてかちりと回し、取っ手を勢いよく引いた。
その台の上に、横を向いて転がっていた。
頭蓋骨が砕けた、死体。
ダニーは一瞬、息をのんだ。けれどすぐに、その息をふっと吐いた。
短く刈り揃えられた薄茶色のナイロンの髪が、頭皮を模したシリコンを覆っている。その頭皮は、後頭部で大きくめくれ上がっている。
そこから飛び出ているのは、銀色の薄いアルミニウムの膜や、ステンレスの殻や、ちぎれて伸びるスチールのバネや、ナット。
無機質な躯体を隠す兵装の上に、たった今死んだばかりのような顔がのっている。シリコンの皮膚は未だしっとりと湿り、半開きの目を覆う茶色の睫毛は柔らかく、その奥の眼球もきらきらと輝きを失ってはいない。けれどその目は――光感知センサは――すでに世界のどこにも焦点を合わせることはない。
博士は久しぶり、というように息を吐きながらタイプAの通り名を呼んだ。
「アルバート」
「シミュレーション中に壊れたんですか?」
博士は口を開かず、ただ小さく頷いた。
換気ダクトから漏れる微かな唸り声。ふたりの体温をエネルギー源にゆっくりと対流する、かび臭く、重く、冷たい空気。「死んでいる」アルバート。動かないふたりの男。
きっかり1分ほど経って、待ちきれずダニーは聞いた。「どうして?」
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