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はじまり
この世界には記憶を記録する紙がある。通称『記憶書』。これは、この世界で生きる全ての人々が所持しているものだ。その紙には生を受けてから死ぬまでの人生が書かれる。生きている間、内容が付け足されていくので、紙の量は増える。しかし、本のように綴じられてはいない。一度落とせばバラバラに散らばる。そんな紙、拾わずに放っておけばいい。
「そんなことを思ってはいけない。なぜなら、君たちの記憶を記録しているものだから。その紙を落とせば、その部分に書かれている記憶を忘れるよ? ワタシは面白いからそれでもいいけどね」
ワタシは記憶書の管理人。ワタシはこの世界に生きる人々の記憶を見ることができる者。思い出させることも忘れさせることもできる。ワタシはこの世界を創りし者。さて、本日はどの人間で遊ぼうか?
「ああ、あの人間の娘にしようか。黄金の瞳。髪は明るめのアッシュグレー、前髪のメッシュと毛先はホワイト。気が弱そうでワタシの遊びで壊れてしまうかもしれない。だが、あれはワタシの下まで来て、探すだろうね」
ワタシは彼女があの場所に来るように準備をする。彼女はワタシの思い通りに動くはず。楽しみだ。
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