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Indigo 0
また花嫁が急死した。
結婚式の最中に急に倒れ、そのまま死亡が確認された。
今月に入ってからこれで三件、同じ事故が発生している。
花嫁衣装としてまとっていた手袋の下は三人とも手首が赤い光に染まっていて、それで死因が確定したそうだ。
「つまり、幸せすぎて記憶容量が記憶に耐えられず、夭折ということですね。昔のことみたいです」
若手の記憶容量外科医、オリーブが呟いた。医院の休憩室のソファに座って放映機器を眺めていたが、やがて白衣の袖をめくり、確認するように自分の手首を見下ろした。
「それはどうだろうな。今だって、手術の金が出せず若くして死ぬ人は一定数いる。技術も広まって昔より手が出しやすくなったとは言え、メモリ操作はまだまだ高額だ」
オリーブの向かいの椅子から返事があった。腰掛けた貫禄のある男がじっと彼を見る。
「インディゴ院長の若い頃は、こういう事件は多かったですか?」
インディゴと呼ばれた男は興味を秘めた眼差しを部下に向けた。
「ずいぶんと切なげな顔をしてくれるな」
「当然ですよ。せっかくの晴れ舞台なのにその晴れ舞台の幸せな気持ちがゆえに急死だなんて、いたたまれないです。しかも防げる原因で。外科医として悔しいです」
人の記憶は生まれつき定められた枚数のページしかないアルバムのようなものだ。そこに写真を貼り付けて増やすのは簡単だ。しかし、その写真を剥がすには、そしてアルバムのページを増やすには、オリーブやインディゴのような記憶容量外科医が持つメモリ操作技術が必要だ。
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