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「海って、『母』なんだっけ?だとしたら大地は『父』かなぁ……」
姉が離婚した。
「太ちゃんの『太地』はね、『大地よりも大きく肥沃した人になってほしい』って想いを込めたって昔お母さんから聞いた事があるよ」
姉があの男と結婚式を挙げて今日で1年半が経つ。
「肥沃した大地かぁ……まぁ、地元よりこっちの方が土の質は良いのかもね」
本州から……あの土着的な人達から逃げるようにしてこの橋を渡った僕に最愛の姉が追いかけてくるなんて、式参列の日には思ってもみなかった。
「比喩だよ、比喩。太ちゃんってば大学生なのにそんな事も知らないの?」
大きくて白い橋が真下から望める小さなベンチに腰掛ける僕の太腿に白いワンピース越しのやわらかでしなやかな太腿をくっつけている癖に、頬はプクッと膨れてちょっと怒っている風に姉は言うのだから僕の鼓動は変調し小刻みかつ大きな音を立てていく。
「まだ19歳の学生だからね。5歳上の花ちゃんには勝てないよ」
全ての感情を抑え込んで苦笑いしてみせると、姉の花ちゃんはその名の通りふわりとした笑みを浮かばせて僕の手を握りしめる。
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