橋を下から見つめる

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「花ちゃんは……明日からどうするの?」 「そうだなぁ……太ちゃんの大学に潜入してみようかな」 「やめてよ、恥ずかしい」 「24歳が大学生のフリしちゃダメ?学歴は持てなかったけど気分だけでも味わってみたいなぁ」 「ふふ」  僕は思いがけない姉の冗談を笑い飛ばし、分かりやすく笑ってみせたけれど、僕の唇はその冗談に真剣に乗ろうという気でいた。 「花ちゃんがそうしたいなら大学生ごっこしてみようよ」 「一緒に手を繋いでキャンパスを歩こう。案内してあげる」 ……縫い付けられた糸がなければ僕の唇は簡単にそう動かし喉も舌も使って大きく明るい声を発していたのだろう。 でも現実の僕はどうだ。醜い笑顔を張りつかせて曖昧な鼻笑いをしているだけじゃないか。あの男とやっている事は変わらない。 「九州ってさ、思ったよりも広いんだよ。 慰謝料でもなんでも、花ちゃんの持ってるお金をパーッと使って旅行しちゃいなよ」 「えっ?」  それだけではない。心にもない言葉ばかりがポンポンと出てきて太腿の密着も解いてしまう。
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