橋を下から見つめる

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「九州をぐるっと一周したら、また太ちゃんに会いに行ってもい」 「取り敢えずお腹空いちゃったよね!焼きカレー食べない?この辺の名物なんだよ!!」  僕はそれを確かめるのが怖くなり、ワザと大きく明るい声を出しながら花ちゃんに自分の手を差し出した。 「焼き……カレー?」 「うん!すっごく美味しい店があるんだ。奢ってあげる。あとねーバナナも美味しいよ」 「えっ?バナナ??」 「うん!それからねー他にもねー」  白くて細い指を自分の指と絡め、早口で(まく)し立てながらこの地域の名物料理を花ちゃんにプレゼンし、互いの心の奥底に何を秘めてるかという一種の現実から目を背けた。 「ちょっと太ちゃん!もっとゆっくり歩いてよ、ゆっくり喋ってよ!」 「嫌だよそんなの、もうお腹ペコペコで我慢出来なくなっちゃってるんだから!」  姉の制止を無理矢理振り切り、僕はかつての幼いきょうだいだった空気感を出して花ちゃんをグイグイと引っ張る。
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