橋を下から見つめる

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「もうっ……お腹空いてイライラするなんて昔から変わらないんだねぇ太ちゃん」  僕の態度に花ちゃんは根負けしたのか、クスッという姉らしい笑い声が背中に振り掛けられた。 「そうだよ、僕は昔も今も変わらず『花ちゃんの弟』だからね」 「ふふっ」  二度目に背中に降り注がれた姉らしい笑い声に、僕の鼓動は落ち着きを取り戻す。 (そうだ……これでいい。僕は花ちゃんの弟である上にあの白い橋と同じなのだから)  橋を下から見上げていたあのベンチが遠ざかっていく(ごと)に、「この2年自分の本音を明かさないままで居て良かったのだ」という自分の考えを改めて肯定した。  だって僕は花ちゃんと濃い血で繋がっているのだから、たとえこの想いが彼女と通じ合っても明るい未来はやって来ない。  未成年の大学生という身分かつ「逃げてきただけ」「橋を渡っただけ」の僕ではまだ彼女を「女」にする勇気も度胸もないし、土着的なあの人達に何かしらの理由をつけられて引き戻される可能性もまだ(はら)んでいるのだ。  それならば彼女の言う通り身も心もあの橋と同じになって彼女に白い羽根を与えて自由にさせてやれば良い。
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