すみれの詩

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17の冬。 私は、家族はおろか、一族すべてを殺戮された。 それが、この復讐劇の幕開け。 黒づくめの破落戸(ゴロツキ)の身なりをした殺戮者は、まだ温い家族の血に染まる切っ先を立ち竦む私に突きつけ、“憎けりゃ追って来い”と高(わら)いと消えない憎悪を残して消えた。 今までは喧嘩程度に戦えていたとはいえ、負かした相手は己よりも少し弱い同族。 むごい殺戮を働いた凶漢に歯がたつ訳もない。 家族を殺されるまでただの少女でしかなかった筋力乏しい小娘が力をつけるのは容易ではなかったが、宿敵を屠るただその目的で技を磨き──手当たり次第、なりふり構わず、わたしは太刀打ちできうるだけの力を身に付けるべく修練に打ち込んだ。 復讐しか思い描けなくて、年頃の娘が好むような身なりや小物を拒み…不健全な目をしたわたしを、周囲は腫れ物を見るようにして避けていた。 家族が殺されてから5年、わたしは22になっていた。 奴の足跡を追いながら地方を流浪し…方々で情報を集めた私は───宵闇に紛れ、ついに宿敵の男が暮らすという町に辿り着いた。 酒場で聞いた話によると、破落戸はどんなに年季が入ってもやっぱり破落戸でしかなく、その町には十年以上前から悪い腫瘍のごとく居座っているのだという。 話を聞いてすぐ、私はその男の根城に忍び込むことを決めた。 もちろん、宿敵を殺す以外に用はない。 背後から門番を鞘打ちで気絶させ、騒ぎを聞きつけて立ちはだかってきた男たちを一人二人、四人殴り倒したところに、宿敵によく似た顔立ちの無頼漢がにじり出てきた。 しかし────身構える間もなく巨漢の凶漢の拳を受けた体は木の葉のように地面をもんどり打ち、為す術もなく殴られ続け、字面どおりのボロきれにされた。
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