優等生×ヤンキー

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優等生×ヤンキー

・優斗 毎テスト学年一位の超秀才メガネくん。美術以外は何でも出来るが鼻にかけない。 誰にも嫌な顔はしない、悪口は言わない、だが誰にも良い顔をしない、褒めない。 誰もメガネを外した姿を見たことはないが、恐らくイケメンだろうという噂が飛び交う。 ・純 留年間近のヤンキー。 住む町では多少名の知れた喧嘩好き。 細マッチョ。 ある日の午後九時頃。 純はいつも通り、街をうろついていた。理由はない。ただ、誰かに会えたらとは思っていた。 いつもは仲間に遭遇する公園、今日は不運にも誰もいないようだ。 純は持て余した暇を振り払うように足元にあった缶を蹴飛ばし、踵を返す。 することがなく暇だが、それ以上に家には帰りたくない。帰っても、嫌な思いをするだけ。 「どうすっかなー…………」 偶然手元にあった五百円玉を弄びながらコンビニへ向かう。 人通りも増えてきて、自分に向けられる視線の数も増えてきた。 鬱陶しく思いつつ、ふとコンビニから出てきた人物に見覚えがあった。 いつも分厚い本を片手に、たまに眼鏡の位置を直しながら、いかにも優等生という感じの出で立ちの………むかつくやつ。 こんな深夜になにやってんだ? 夜食でも買ってんのかと考えを巡らせてみるが、推察するには情報が少なすぎる。 少なくとも信号の向こうのビニール袋の中身が見えるくらいの視力を持ち合わせていない。 ちょうど暇だし、という理由で、純は眼鏡の彼に近付くことに決めた。 「おい」 「…」 「…おい、」 「……」 「おい、って言ってんだよ!」 「…、!」 コンビニを過ぎ、人通りの少ない夜の住宅街に入ったところで純は彼に話しかけた。 だが何度もの呼び掛けにも応じないものだから、苛立って彼の肩を掴む。 本当に聞こえていなかったのか、彼は少し体を震わせてこちらを振り向いた。 その彼は、眼鏡をしていなかった。 彼の眼鏡姿しか見たことなかった純は驚きから声を出せない。 眼鏡のはずの彼は振り返った姿勢そのまま、こちらに眉間にしわを寄らせて睨みつけ、 「………………あ゙?」 …ひどく低い、唸り声にも似た声を発した。 「…え、」 いつも物静かで大人しく、眼鏡をかけて勉強ばかりしている彼の威嚇するような声は、もちろん動揺した純の動きを止めた。 純は、予想だにしていなかったのだ。 彼のこの姿を、ひどく恐ろしいと感じる事を。 そして、 その姿に、心の昂りを感じる事も。 なんだこれ、と純は思わず自分の胸の当たりを掴む。動悸が鳴り止まず、息苦しい。 「………はぁ?なに?」 また彼の発した気だるそうな声に、さらに動悸は加速する。 目の前に気配を感じ顔を上げると、目と鼻の先に、彼の顔があった。 さっきは少し離れていたし暗かったのであまりよく顔は見えなかったが、今度ははっきりとそれを捉える。 いつも無表情なはずの顔、その顔がひどく歪み、純を強く睨みつけている瞳には、小さな自分の姿。 彼はいかにも不機嫌そうだった。 「…あ、クラスメイトの…純くん、だっけ」 「…あ、お、…うん」 「なに?」 「あ、いや、え、おまえ、こそ」 「別に何でもいいでしょ、君も早く帰りなよ」 なまえを、よばれた。したのなまえで。 体が熱かった。しばらく立ちすくんでいた純は、彼がさっさと去っていった事にも気付かない。 自分の目の前に映し出された彼の顔がまだ脳裏から離れない。 耳に届いたあの低い声は、本当に彼の声だったのだろうか。 まっすぐ家に帰ってベッドへ飛び込む。 まだ、胸の音は止まなかった。 …あの声で、あの表情で、また名前を呼んで欲しい。 あの瞬間、純は彼に支配されたも同じだった。
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