二人の怯えた生きたがり

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 それから僕らは、夜の町をデートした。  誰もいない遊園地に行ったり、楽器屋の死んだ店主に初心者向けの楽器を聞いてみたり。  絵に描いたような幸福だった。もう恐怖はどこかに消え去っていた。  だから最後に見上げた空を真夏のオーロラが覆っても、僕らは笑っていられた。 「私、結婚してみたかったわ」 「今からでも遅くないさ」 「ホントかしら。もう人間なんて誰も残ってないのよ?」  小さな街灯を立たせたベンチに寄り添って、僕らは言葉を交換する。  他愛のない、出会った頃と変わらない会話。透き通った緑の光に照らされても、それだけは変わらなかった。それが幸せだった。 「僕がいるだろ?」 「告白みたいね」  と少女が笑った。 「みたいじゃないよ。告白してるんだ」  と僕は微笑む。それから彼女の指を取って、たおやかな左の薬指に小さなリングを滑らせた。 「結婚してくれるかい?」  その時、少女が笑顔を浮かべた。それはこれまで僕に向けられていたどの種類よりも、特別な笑顔をしていた。 「喜んで」  僕は彼女の手を握って、そっと呟く。 「死にたくないなぁ」 「ええ、ホントに」  手を繋ぐ。  お互いを確かめるように、見つめあってキスをする。  空を見上げる。  美しい、透き通った緑白色の夜が降ってくる。
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