テロメアの尽きる日

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 公園は静まり返っていた。  一組のカップルが寄り添いながら死んでいて、無人のブランコが風に遊んでいる。  僕のようなひねくれ者にとっては、それが公園の正しい在り方に見えた。  けれどそこに、あの生きたがりの少女はいない。  僕は揺れるブランコを捕まえて腰を降ろす。いつも少女の座るブランコは、彼女を忘れたかのように沈黙していた。  どれくらい経ったのか。  もう手足の感覚はない。家を飛び出した時よりも世界は冷たくなっている。このまま少女に会えないまま、僕も冷たくなっていくのだろう。 「世界の終わりも、きっとあの子となら」  白い吐息と共に零れた言葉は、あの日彼女が言えなかった言葉。  あの言葉の先には何があったのだろう?  わからない。だって僕は、あの子の名前だって知らないんだ。 「でも、怖くはなかったんだろうな」  聞かなかった言葉の先を補完して、僕はそっと目を閉じる。  猛烈に眠い。  意識がアルコールを思い出したように薄れていく。テロメアが擦りきれて、僕の余生が尽きていく。  その時、聞いたことのある声が聞こえた。 「ひどいわ、女の子の告白を奪っちゃうなんて」  振り返った僕は息を呑む。  この時、僕はひどく驚いていた。けれど同時に、ひどく安堵していた。  止まりかけた胸の底が、熱を灯してまた活発に動き出したような気さえした。  見上げたがにこりと微笑む。 「こーんばんは、へそ曲がりおにーさん」 「あぁ……」  白んだ息が零れる。そして僕は笑って応えた。 「こんばんは──生きたがりお嬢さん」  この結末には、武器も楽器もありはしない。  それでもこの少女と再会した時から、どうしようもなく、僕のハッピーエンドは始まる。
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