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「彰真。お前、自転車競技部に入ったんだって?」
四月も後半に入ったある日の昼休み、一緒に弁当を食べていた中学時代から同じクラスの友達一人が切り出した。僕が「うん」と答えると、もう一人が驚いたように目を丸くした。
「きついんじゃないのか?てっきり、中学と同じサッカー部に入るのかと思ってたのに…」
「まぁ、練習は大変だけど、けっこう楽しいよ。中学で足きたえてたから、それを活かせるのもいいなぁって」
「ふーん。違う部活になったけど、お互い大会目指してがんばろうぜ」
自慢げに笑う僕に、友達は意外そうな表情を向けていた。
「うん」
返事をしながら僕は、『本当は、漫画の影響なんだけど』なんて考えていた。
しばらくみんな黙って弁当を食べていた。
「…そういえば、今日は、部活の前に委員会集会だよね」
僕が思い出して確認のつもりで言うと、友達みんながあからさまに嫌そうな表情になった。
「彰真、思い出させるなよ!委員会って、じゃんけんで決まったやつだろ?」
「お前は視聴覚委員だろ。楽そうでいいじゃん。俺なんか、生活委員だぜ。整容点検の手伝いとか色々やらないといけないらしい」
「視聴覚って字が面倒くさそうじゃん。そもそも、集会があるのがなぁ」
勝手に会話が進んでいく。僕もそこにまざろうかと考えたけど、五時間目が近づいていたから心の中だけで言うことにした。
『僕は、小説なんてまったく興味ないし、きっと昼休みや放課後もけずられる。…図書委員なんて、ほかのどれよりも面倒じゃないか』
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