0人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっそくだが、今日はいつもの道を回ってみようと思う。新入生もいるが、見ている限り全員慣れてきたようだから、試しに行くぞ」
学校生活にも部活にもやっと慣れてきたころ、部長が部員の前で叫んだ。戸惑う僕ら一年生とは逆に、二・三年生はとてもうれしそうだ。今まで、先輩たちは初心者の僕らに合わせて、ローラー台練習や短い距離での練習ばかりだった。
「ローラー台、難しくなかった?」
僕は、となりに立っていた同じ一年生の村井大輔に小さな声で言った。すると彼は、ギロッとにらんできた。そんな彼をみて、僕は気まずくなった。彼に声をかけると、いつもこうだ。
「俺は、小学から自転車やってるんだ。興味本位でやってる君と一緒にしないでくれ。それに、毎回いってるけど、俺に声かけてこないでほしいな」
「う、うん。ごめん」
ほぼ毎日、このやりとりをしている。
彼は、いつも僕らを見下したようにみているから、同級生で声をかけるのは僕くらいだ。僕は同情で声をかけているわけではなく、彼の走りに憧れて、一緒に走りたいから声をかけている。
『また、明日、声をかけてみよう』
そう心のなかで呟きながら、僕は微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!