新たな挑戦

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「さっそくだが、今日はいつもの道を回ってみようと思う。新入生もいるが、見ている限り全員慣れてきたようだから、試しに行くぞ」  学校生活にも部活にもやっと慣れてきたころ、部長が部員の前で叫んだ。戸惑う僕ら一年生とは逆に、二・三年生はとてもうれしそうだ。今まで、先輩たちは初心者の僕らに合わせて、ローラー台練習や短い距離での練習ばかりだった。 「ローラー台、難しくなかった?」  僕は、となりに立っていた同じ一年生の村井(むらい)大輔(だいすけ)に小さな声で言った。すると彼は、ギロッとにらんできた。そんな彼をみて、僕は気まずくなった。彼に声をかけると、いつもこうだ。 「俺は、小学から自転車やってるんだ。興味本位でやってる君と一緒にしないでくれ。それに、毎回いってるけど、俺に声かけてこないでほしいな」 「う、うん。ごめん」  ほぼ毎日、このやりとりをしている。  彼は、いつも僕らを見下したようにみているから、同級生で声をかけるのは僕くらいだ。僕は同情で声をかけているわけではなく、彼の走りに憧れて、一緒に走りたいから声をかけている。 『また、明日、声をかけてみよう』  そう心のなかで呟きながら、僕は微笑んだ。
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