新たな挑戦

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「おつかれ。あとは、放課後によろしくね」  歩きながら詩希先輩は、僕に言った。それで、僕は思い出した。放課後も当番をしないといけないこと。そして、部活のこと。 「……部活、行きたくない」 「えっ?」  無意識に声に出した言葉に、僕は『しまった』と思った。先輩は驚いて、歩みを止めていた。 「…もしかして、部活で嫌なこと、あった?私でよければ、相談にのるよ」  先輩に心配かけたくなくて我慢しようと思ったけど、先輩の優しい声で僕は泣いていた。 「すい、ません…。自転車で一緒に走りたい人がいるんですけど、彼はプロ目指してて、いつも声をかける僕を嫌がってて…。それに、ぼくは道路練習でも彼に追いつけなくて…」 「私は、自転車はよく知らないけど…、原点に戻ってみるといいんじゃないかな?」 「原点…?」  先輩は廊下の壁に寄りかかり、立ち止まった僕に言った。 「そう、原点。…千葉くんは、なんで自転車、競技部に入ろうと思ったの?」 「それは…、漫画の影響、です」 「そっか。もしかして、あの漫画かな?…それなら、今日借りた本を読めば、何か見つけられるかもしれないよ。それに、…楽しまないとね!」  先輩の言葉の意味がわからなかったけど、先輩の笑顔を見た僕は借りた本を早く読みたくなった。
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