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自分嫌いを変えるきっかけを探すために、図書室で私はある本を開いた。その本は写真集だった。こういう本も図書室にあるんだと初めて知った。全国各地のきれいな風景をいろんなカメラマンが撮っている。
本を眺めていて、おじいちゃんのことを思い出した。
『おじいちゃんも、よく地元の写真撮ってたな…』
おじいちゃんの住む地域は、山に囲まれた田舎町。人口もそんなに多くなくて、田んぼばかり。
中学生のころは、家族みんなでおじいちゃんの家に行っていたけど、私が高校に入る前におじいちゃんは死んでしまった。それ以来、おじいちゃんの家には行かなくなった。
「……私も、また行って、写真撮りたいなぁ」
言い終えてから私は、思いついていた。
『もう一人で、自分だけで、行けるじゃんっ!』
計画を立てようと考えると、わくわくしてきた。
「このわくわくが、先輩の言ってた楽しみなのかな」
読み終えた写真集を閉じた私は、そばのガラス張りの壁から見える空を見上げて呟いた。
腕時計を見ると、部活が始まっている時間になっていた。私は、急いで本を返して駆け出した。教室から駆け出したときとはまったく違って、とてもさわやかな気持ちだ。楽しみがあるだけで、明日がこんなにも待ち遠しい。
部室にむかう途中、音楽室の前を通るとピアノの音が聞こえてきた。だれが弾いているかはわからなかったけど、その音色は私の背中を押してくれるかのように力強く、私の耳に響いていた。
「きっと、毎日のなにかがきっかけで、私も少しずつ変わっているんだろうな」
ピアノを聞いていて、私は前向きな気持ちになった。
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