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大きめリボンのヘアピンは赤色で、瑠月はいつも頭につけていた。
「ねぇ、蓮ちゃん。似合うでしょ? お兄ちゃんに買ってもらったんだ」
その話は何度も聞いている。
リボンをつけている瑠月は、僕の隣で嬉しそうにしていて、笑顔が輝いていた。
そのリボンは、今から一ヶ月前のゴールデンウィーク最終日に、瑠月のお兄さんが帰省してきて、お土産にと瑠月の為に買ってきたものだった。
瑠月のお兄さんは、瑠月の十才上で、現在、二十一才である。
瑠月のお兄さんは一年前に結婚した。今は、瑠月の家から車で二時間かかる離れた場所に住んでいて、最近は見かけないけれど、瑠月のお兄さんは、背が高くて、とてもかっこいい人だと、僕は知っている。
『お兄ちゃんはね、優しいんだよ。私はお兄ちゃんがすごく、すごく、大好き』
瑠月はリボンの話とともに、いつも嬉しそうにお兄さんの話をする。
小学校から一人で帰宅して、僕はランドセルをおろしてから部屋でくつろいでいると、七階建てマンションの五階に住む瑠月は、珍しく慌てて、そのマンションの最上階に住む僕の家にやって来た。
そして僕は今、内心、少し喜んでしまっているんだ。
瑠月がそのリボンを……なくしたみたいだから。
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