27人が本棚に入れています
本棚に追加
近くの「あらきの森公園」にやってきた。
どうやらリボンをなくしたのはここらしい。
「あらきの森公園」は緑豊かな武庫川のそばにあって、ブランコや砂場など遊具が充実している。
瑠月は、緑や遊具には一切目もくれず、下を向き、必死にきょろきょろとして広い敷地内を歩き回る。
僕は辺りを見回すけど、細かく探したくはなくて、視線の先を特に深く見つめるわけでもなく、ころころと変えている。
でも、探すフリにはなっているはずだ。
探してあげたい気持ちはあるし、瑠月のために探さなきゃならないとは思ってる。
瑠月のお兄さんが、瑠月のために買ったリボンを。
でも僕は、心底見つかってほしくない。
三十分ほど探した。瑠月にあきらめる気配が全然なくて、僕ははっきりと『リボンを探したくない』と言えなかった自分をどんどん嫌いになっていった。
『もう、あきらめよう? 瑠月』
何度も言いかけて、やめてを繰り返していた。
その時、杖をつき、青と黄緑の花柄のチュニックを着たおばあさんが、困っている瑠月に気付き、近寄ってきた。
「どうしたの? 何か探しているの?」
「ねえ、おばあさん。ヘアピンのリボン見なかった? 私、落としちゃったんだ」
瑠月が尋ねると、おばあさんは指を差す。
「ああ。髪留めのリボンならあっちに落ちてたよ。あなたの探してるものと同じかは……分からないけど」
「それ、赤色だった?」
「赤色だったよ」
「本当!? ありがとう、おばあさん」
瑠月は、おばあさんにお辞儀をして、まっすぐ走り出す、嬉しそうに。
僕も走る。焦って瑠月の背中を追いかける。
おばあさんが教えてくれたリボンが、どうか、瑠月のものではありませんようにと願って。
最初のコメントを投稿しよう!