さよならリボン、おかえり瑠月

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 近くの「あらきの森公園」にやってきた。    どうやらリボンをなくしたのはここらしい。  「あらきの森公園」は緑豊かな武庫川のそばにあって、ブランコや砂場など遊具が充実している。  瑠月は、緑や遊具には一切目もくれず、下を向き、必死にきょろきょろとして広い敷地内を歩き回る。  僕は辺りを見回すけど、細かく探したくはなくて、視線の先を特に深く見つめるわけでもなく、ころころと変えている。  でも、探すフリにはなっているはずだ。  探してあげたい気持ちはあるし、瑠月のために探さなきゃならないとは思ってる。  瑠月のお兄さんが、瑠月のために買ったリボンを。  でも僕は、心底見つかってほしくない。  三十分ほど探した。瑠月にあきらめる気配が全然なくて、僕ははっきりと『リボンを探したくない』と言えなかった自分をどんどん嫌いになっていった。  『もう、あきらめよう? 瑠月』  何度も言いかけて、やめてを繰り返していた。  その時、杖をつき、青と黄緑の花柄のチュニックを着たおばあさんが、困っている瑠月に気付き、近寄ってきた。 「どうしたの? 何か探しているの?」 「ねえ、おばあさん。ヘアピンのリボン見なかった? 私、落としちゃったんだ」  瑠月が尋ねると、おばあさんは指を差す。 「ああ。髪留めのリボンならあっちに落ちてたよ。あなたの探してるものと同じかは……分からないけど」 「それ、赤色だった?」 「赤色だったよ」 「本当!? ありがとう、おばあさん」  瑠月は、おばあさんにお辞儀をして、まっすぐ走り出す、嬉しそうに。  僕も走る。焦って瑠月の背中を追いかける。  おばあさんが教えてくれたリボンが、どうか、瑠月のものではありませんようにと願って。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加