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「あった!」
見つかったリボンは、滑り台近くにそびえ立つ木の下に落ちていた。
そのリボンは紛れもなく瑠月のものだった。
瑠月は嬉しそうにしている。リボンを両手でそっと抱えて。
笑顔が輝いている。
僕がその時に思ったのは二つ。
『良かったね、瑠月』
『何で見つけてしまったの、瑠月』
瑠月は僕を見て、表情を曇らせた。
「蓮ちゃん?」
「なに」
「何で……泣いてるの?」
泣いてないよ、まだ。
「蓮ちゃん、どうしたの?」
瑠月は顔を覗きこむ。
「……だってさ……っ」
こぼれはじめた涙は、僕の心を一気に冷やしていく。
そのリボンは、嫌いなんだ。
そのリボンは、瑠月の頭の中に、瑠月のお兄さんのことばかりを映して、いつだって、僕の好きな人を奪おうとするんだ。
「大丈夫? 連ちゃんはどうしたら元気になる? 私に今できることある?」
瑠月は僕の手を握り尋ねる。
僕は声を絞り出す。
「リボンを捨ててよ」
「え……?」
「捨ててよ、瑠月」
瑠月は沈黙になった。
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