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瑠月のリボンは草むらを探すとすぐに見つかった。
ぱっぱと手で砂を払って、瑠月はリボンを髪につける。
「ねえ、蓮ちゃん。似合う? お兄ちゃんに買ってもらったんだよ」
「うん、似合うよ」
今の僕なら、嬉しそうな瑠月を見て、一緒に喜んであげることが出来る。
……少し悔しいけれど。
「ねえ、蓮ちゃん」
「何?」
「私はね……ずるいんだよ」
「……ずるい?」
瑠月は、ふと空を見上げる。
「このリボンをつけるとね、私の好きな人が……私を見て嫉妬してくれるんだ」
「え?」
瑠月は、僕を見た。
「それが嬉しくて、だから……いつも身につけちゃうんだ」
「嬉しい? いつも身につけちゃう……?」
「……えへへ」
瑠月はそう言って微笑む。
言葉の意味が分からずに少し考える。
考えた後で、僕は呟く。
「……ひどいよ、瑠月」
僕は、心の底からほっとした。
そして、微笑む瑠月を見て、僕はそっと笑顔をこぼす。
瑠月のリボンは、風に揺れている。
「大好きだよ、蓮ちゃん」
嫌いだったその赤色リボンは、今、僕の目に、輝いて見えていた。
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