六等級の石

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 エミルが殺されたとされる日の前の夜、レオが、煙突掃除ってどんなのか知りたい。と言って、俺のブラシを担いだり触ったりしていた。それを、町を出てから思い出した俺は、それを手紙に書いた。  俺の住んでいた町から西の町には郵便屋があった。それを知っていた俺は、早速手紙をヴァロ宛に送った。  郵便屋を出ると、大通りの中央にある大きな噴水に人だかりができていた。そして噴水のふちに立っていた男が大きな声で言った。  「たった今、とあるニュースが入ったぁ。隣町の『ふわふわ村』から、殺人鬼がこちらへ逃げてきているらしい。そいつは結婚間近の男を殺している。背が高くて少し痩せている、名前はオンニというらしいぞぉ」  俺は黒い帽子を深く被り、この町を出た。  それから林を抜けた先に、小さな村があった。そこに入って、ここ数日眠れていなかった俺は、町外れの小さな家の戸を叩いた。すると、中から出てきたのは、綺麗な緑色の瞳をした少年だった。  「はい」  「俺は旅の者で、宿を探してるんだ。もしよかったら一晩泊めてくれ」  「いいよ」  少年はあっさり応えて、俺を中に入れた。それに少し驚きながらも、俺は少年の家に入った。  「やぁこんばんは、僕はレオ。君は?」  「俺は、ケムだ」  俺の町の話がここまで来たら、無駄に少年、レオを怖がらせると思った俺は、探されていない奴の名を名乗った。するとレオは茶を出して、自分用のそれを飲んだ。俺も一口茶を飲むと、部屋を見渡した。他に人の気配がない為、俺はそっと聞いた。  「お前は、一人で住んでるのか?」  「そうだよ。パパもママも死んじゃっていないんだって……そうやって教会のおばさんからきいた」  「そうか……」  こいつも孤児か。と思いながら、そっと窓から外を見た。  「ねぇ……お茶、まずかった?」  「いや、美味いぞ」  「そっか、よかったぁ。僕のおうちにお客さんなんて来たことなかったからさ……ケム。君が最初のお客さんなんだよ」  「そうか」  「うん。だからね、初めてお茶飲んでくれて、初めて一緒にごはん食べて、一緒に寝るんだ。ほら、僕の目緑色でしょ? 緑色の目は不吉の象徴なんだ。だからこの村のみんなは僕と一緒にいるのが嫌なんだ。だから……あっ、ごめんね、変なこと話して」  レオは慌てて詫びた。俺は茶を飲んで応えた。  「構わない。あと、俺はお前の瞳は綺麗だと思う」  レオは両目を大きくして俺を見ると、嬉しそうに笑って、ありがとう。と言った。  「ねぇ、ケム。僕も旅に連れてって」  夕飯を食べ終わると、俺の荷物を眺めたレオが、俺をまっすぐ見て言った。理由は、瞳の事だと何となく思った俺は、低く応えた。  「明日の朝、この村を出る。準備しておけ」  「わかった。ありがとう、ケム」  「あと、俺はケムじゃない。オンニだ」  「オンニ……そっか。おやすみなさい、オンニ」  レオは荷造りを始めた。俺はそっと毛布にくるまり、部屋の隅で眠った。  
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