六等級の石

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 気付いたら俺は、無数の星が瞬く、暗闇の中にいた。  綺麗だ。と思った時、どこからともなく『声』がした。  「こんにちは、十等星さん」  辺りを見回しても、誰もいなかった。その『声』は続けた。  「この石に興味があるようですね。この石は、一人にひとつある石です。そこの暗い石は、生きている者の石。この石の中を覗いてみてください」  俺は、目の前の黒い石を覗いた。すると、親子三人で、芝生で遊んでいるのが見えた。  「……やたら、男の顔が写るのが多いな」  「そりゃあそうですよ、その男の石なのですから」  「そうか」  俺は、その石の近くにある青く輝く石を眺めた。そしてその石が黒い人の形をした者の胸元にあることに気付いた俺は、静かに数歩下がり、『声』に聞いた。  「この、光ってるのは何だ?」  「それは、死者の石です。死んだら、その者の石は輝きはじめます。最初は小さく、丁度、今の貴方の石のようにね」  青く輝く石のお陰で、『声』の正体が見えた。  といっても、黒い人の形をした影のような奴だが。  俺が『声』を見ている事に気付いたそいつは、俺に言った。  「あぁ、申し遅れました。私はこの世界の案内人です」  「そうか。俺は……」  名乗ろうと思った時、案内人は俺の口に人差し指を当て、首を横に振って言った。  「いらないです。それより、これからが大事なので、よく聞いててくださいね」  俺が頷くと、案内人は続けた。  「死んだばかりの石は、小さく弱く輝きます。そして、移動ができます。そして七日ごとにその光は大きく強くなります。そしてこれくらい青くなると動けなくなり、そこにずっととどまることになります」  俺は、青く輝く石を見て少し驚いた。案内人は少し慌てて付け足した。  「勿論、いきなり青くなりませんよ? 最初は赤く、次に白く、そして青くなります。だから、白くなる頃には、この人の石を見守っていたいと思う石を見つけておくといいですよ。彼女のようにね」  案内人は目の前の青く輝く石を胸元に持ったそいつに深々お辞儀をした。するとそいつはそっと光り、黒い人の形は老婆になった。そして老婆は笑って案内人にお辞儀をした。  老婆は俺を見て笑った。俺が小さくお辞儀をすると、老婆も小さくお辞儀をして、さっきの男の石を眺めた。  俺は、案内人に聞いた。  「生きてる者の石ってのは、動かないんだな?」  「そうです。では、ごきげんよう」  案内人はそう言うと、ふわっと煙のように姿を消した。  「見守っていたいと思う奴か……」  だったら一人しかいない。と、俺は近くの石から順番に、石の中を覗いていった。
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