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1.1 陽梨
発端はクラスメイトの一言だった。
「大翔、あいつのどこがいいんだよ」
昼休み。教室後方からの不躾な声に陽梨は気が気じゃなかった。自分の噂をされているのだから当然、どんな答えがくるのか聞き耳をたててしまう。
期待と不安がいりまじるなか、だがしかし付き合って三か月の大翔は笑っていなすだけで、はっきりと答えてくれない。
やきもきしたのは陽梨だけでなく、ひやかした男子生徒も。業をにやし、さらに踏みこむ。
「昔からガサツだし、気い強えし、すぐ怒るし。絶対めんどくせえだろ」
同じ小学校出身で何度か同じクラスになったことのある気安さのせいか、ずいぶんな言いようだ。
かたや大翔は中学にはいってから知りあったため、幼いころの陽梨を知らない。となれば評価については前者のほうにいくらか説得力があるし、たとえばここで彼女が「よけいなお世話!」とでも怒鳴りつけてしまえば、それこそが証明にもなってしまう。我慢するしかない。
ぐっと歯噛みで、なりゆきを見守る。そんな陽梨の心をよそに大翔は反論もせず適当にはぐらかし続け、とうとう休み時間が終了。
その一部始終が納得がいかず、放課後、大翔と一緒に帰るときになって陽梨の怒りは爆発した。
「なにあいつ、ほんとムカつく!」
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