1.3 恵茉

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 ここで正直に告白することはできない。かといって晴之に嘘もつきたくない。 「もっと先になったら教えてもいいよ」  迷ったすえ返事をひねりだすも、いつになく食いさがられる。 「なんで?」 「えっと、なんででも」 「どのくらい先?」 「た、たぶん六年くらい」 「六年……」  うつむきかげんで何度か呟き、なにかしら思いついた晴之が、おもむろに視線を恵茉へうつす。 「つきあうとか彼女とか、僕も、もっと先になったら考えるかも。……六年後くらい」  手をのばせば触れられる距離で、目を見かわす。瞳の奥にひそむ輝きに、もしかしたら、と恵茉の直感がはたらく。  ともに過ごしてきたからこその、ひらめき。だけれど、はっきりと言葉にして確かめることはできない。 「そのころ私、二十歳だ。成人式とか楽しみだな」 「お祝いしような、盛大に」 「すっごい期待しとくね」  遠まわしで、もどかしくて、通じあえている保証はない。なんなら、自分に都合のいい思いすごしかもしれない。  それでも大好きな、初夏の太陽を思わせる晴之の笑顔が、寄るべのない心をすがすがしく照らし、憂いの霧をとり払ってくれるから、 「六年、頑張ろっと」  恵茉は、明るい未来を信じていける気がした。
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