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1.4 杏奈
「やっぱ心配っちゃ心配なんだよね、姉としては」
電話口、杏奈がなげく。三つ年上の恵茉の姉で人心にさとい彼女は、恵茉と晴之が両想いなのをとっくに見ぬき、頻繁に気をもんでいた。
「話を聞くかぎり二人ともしっかりしてそうだから、どう転ぶにせよ問題ないだろ」
話し相手はクラスメイトの湊。目下、不登校一か月の身だ。
周りの空気に敏感な彼は、なにかにつけて息苦しさを感じることがあった。それは月日をかさねるごと深刻さをまし、遠からず限界を迎えるだろうと思われたとき、風邪をこじらせ熱がでた。
幸い二日もしたら平常に戻ったが、なんとなくだるさが残り、親も「無理しなくていい」と言うものだから厚意に甘える形でずるずる休みつづけている。
湊の気性を理解する家族は、下手に刺激したら悪化するとでも考えたのか、急かしたり追いつめたりせず彼の自由意志まかせ。
快適といえば快適。退屈といえば退屈。と、のんきに過ごしていたおりスマホが鳴った。杏奈からの電話だった。
それぞれの友人とあわせて四人、二年連続で同じクラスの仲よしメンバー。しかも、なにかと馬があう杏奈との会話は湊の唯一のやすらぎで、毎晩の日課となりつつあった。
本日の話題は恵茉と晴之について。杏奈いわく、数日前から二人の雰囲気が微妙に変わったとのことだ。
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