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テンポのよかったやりとりが、ぷつり、とぎれる。
一瞬、なにがなんだかわからなかった湊だが、自分の発言を反芻し、みるみるうち頬が熱くなった。
「べ、べつに深い意味はない! 興味っていっても本当に単純な興味で、冬の海なんて行ったことないから、そういう意味の!」
「大丈夫、わかってる」
杏奈にとって湊は、恵茉や晴之以上にわかりやすい。だからこそ繊細な彼を傷つけないよう、できるかぎりの心くばりで、うそぶき続ける。
「けど海、真冬の激寒いときが一番好きなんだよね。それだと少し先になるから、事前に楽なとこで慣らしとこうよ。湊の好きな場所は? どっかないの」
「漠然としか。動物がいて、人が少ないとことか」
「なら、うち来る? 犬と猫とハムスターとセキセイインコいるけど」
「まじか、夢の場所かよ。今度の土曜、行ってもいいか」
「全然いいけど、どんだけ好きなの」
からからと笑う杏奈が、お気に入りのペンをとる。そうして動物雑学に花を咲かせるあいま、こっそりと、カレンダーに特別なしるしをつけた。
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