1.4 杏奈

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 テンポのよかったやりとりが、ぷつり、とぎれる。  一瞬、なにがなんだかわからなかった湊だが、自分の発言を反芻(はんすう)し、みるみるうち頬が熱くなった。 「べ、べつに深い意味はない! 興味っていっても本当に単純な興味で、冬の海なんて行ったことないから、そういう意味の!」 「大丈夫、わかってる」  杏奈にとって湊は、恵茉や晴之以上にわかりやすい。だからこそ繊細な彼を傷つけないよう、できるかぎりの心くばりで、うそぶき続ける。 「けど海、真冬の激寒いときが一番好きなんだよね。それだと少し先になるから、事前に楽なとこで慣らしとこうよ。湊の好きな場所は? どっかないの」 「漠然としか。動物がいて、人が少ないとことか」 「なら、うち来る? 犬と猫とハムスターとセキセイインコいるけど」 「まじか、夢の場所かよ。今度の土曜、行ってもいいか」 「全然いいけど、どんだけ好きなの」  からからと笑う杏奈が、お気に入りのペンをとる。そうして動物雑学に花を咲かせるあいま、こっそりと、カレンダーに特別なしるしをつけた。
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