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混乱のさなか陽梨は首を縦にふった。そして大翔自身も。これほどの激情を自分が持っていようとは思ってもみないことだった。
人と競りあうのが苦手で、だからこそ要因になりそうなことはすべて避けてきた。恵まれた体躯を見こんだバスケ部の勧誘を死にものぐるいで断ったのは、いまだに気がめいる記憶だ。
そんな大翔が突然の告白を敢行したのは、焦りがピークに達していたせいだった。
一番うしろの席の大翔には、教室がよく見える。少し前から陽梨を気にしている男子がいて、隙をうかがっては果敢に話しかけている。陽梨に変化はなく、ごく普通にクラスメイトとして対応しているだけのようだが、最初よりいくらか親しげになっている。ひきかえ、自分は挨拶すらままならない。
今回の一件で初めて会話らしい会話をしたとき大翔は、陽梨に関してだけは誰にも負けたくないと強く思った。
そうして後日、あらためて陽梨から好意を告げられてからは、ますます誰にも負けてなるものかと思うようになった――。
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