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さんざっぱら文句を並べたてても、陽梨のいらだちはおさまらない。おまけに大翔が「気にすることないって」などと笑いとばすものだから、なおさら腹がたつ。
「てかさ、否定しなかったってことは大翔もそう思ってるってことだよね」
「思ってないけど、あそこで否定してたら喧嘩になってたかもしれないだろ」
「こうして私と喧嘩になってんなら意味ないでしょ。だったら、むこうと喧嘩してくれればよかったのに」
「俺は、どっちとも喧嘩したくないんだけどなぁ」
背高の大翔が弱りはてて背を丸めるのは、いたずらを叱られた大型犬みたいで、それを見ると陽梨は、どうしたって攻撃の手を緩めざるをえなくなる。
「もういいよ。どうせ私はガサツだよ。自覚あるし」
いき場のないわだかまりを、ため息にして吐きだす。と、隣から聞こえてきたのは意外な返答だった。
「それって、おおらかな証拠だよな」
大翔を見あげる。普段とかわりない横顔は、ご機嫌とりをしているふうでもない。真意を確かめるように陽梨が続ける。
「でも、気が強いし」
「自分の意見をちゃんと言えるのってすごいと思うけどな」
「すぐ怒るし」
「怒る必要のあるとこで怒るのは悪いことじゃないだろ」
「……解釈ポジティブすぎじゃない?」
「そっか? 初めて言われたな、そんなこと」
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