4人が本棚に入れています
本棚に追加
1.2 美優
「って、そんなの二人きりのときにやってよね!」
昼休み、美優の声が教室中に響きわたる。前日のできごとを親友の恵茉に報告してのことだ。
たまたま陽梨と大翔のうしろを歩き、二人の仲むつまじさを余すところなく目のあたりにしたのは、美優にしてみれば災難以外のなにものでもなかった。しかも隣のクラスで接点もないため「よそでやれ!」などと気軽に言える間柄でもない。
その点、さきほどから相槌をうっている恵茉は十年来の幼なじみで、なんでも遠慮なく話すことができる。愚痴だってこぼしたくなるものだ。
「で、美優はどうなの。進展してる?」
優秀な聞き役が、頃あいをみて声をひそめた。美優も、ぐっと身をかがめる。
「それがさぁ……」
最初のコメントを投稿しよう!