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晃樹が園芸委員会にはいっているのを知ってからは図書室で本を借り、陰ながら努力をかさねてきた。いまや知識だけなら、数式や英単語よりも植物についてのほうが上まわる。
「そっちこそ、なんで園芸委員?」
かねてからの疑問を、ここぞとばかり美優がぶつける。
「ばあちゃんが花好きだから」
「そうなんだ。なんの花が好きなの」
「チューリップ」
「だったら次は来年だね。今年のは持ってった?」
「いや、おととし死んだ」
予想外の返しに動揺。あげくに口をついてでたのは的はずれな、
「あたしも好きだけど。チューリップ」
見つめてくる晃樹の視線が気まずくて、心と裏腹、美優の態度がとげ立つ。
「なによ」
「なんか似てんなと思って。うちの猫。あいつも、ばーさんなんだよな。なるだけ長生きしてほしいんだけど」
「ばーさん……」
「そういや、よく見たら、ばあちゃんにも似てるかもな」
「ばあちゃん……」
物申したいことは山ほど。けれども珍しく晃樹がほころんだものだから、美優は顔をそむけ、歓喜の雄叫びを抑えこむので精いっぱいだった。
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