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「いいんだけどね、猫かわいいし。おばあちゃんも、きっといい人だっただろうし」
嘆息の美優が机につっ伏す。ロマンチックな展開を夢みても、てんでうまく運ばない。しかも今回は、思いもよらず老女カテゴリにぶちこまれた。ダメージは甚大だ。
したたか打ちのめされる親友に、恵茉のおせっかい気質がうずく。
「前に何回か同じクラスになったとき噂きいたことあるんだけど、あいつ、親とか兄弟とうまくいってなくて、おばあちゃんと猫だけらしい、心許してんの。てことはつまり、美優けっこういいポジションにいるんじゃない?」
「なんでよ」
「だって、自分の心のよりどころと重ねあわせたりとか、嫌いな相手には絶対にやんないよね。ていうか私なら、なんとも思ってない相手にも、そんなことしないけど」
美優が顔をあげる。きらりと瞳に光がやどり、頬が桃色をとり戻す。
恋の希望にみちる姿は、恵茉の目に美しくみえた。それが嬉しくもあり、羨ましくもあり、そして――。
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