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憂鬱にさいなまれるにつけ恵茉は、屈託なく晃樹を好きだと言いきる美優が羨ましく、ときに妬ましかった。そして親友相手にそんなひどいことを思う自分を軽蔑し、嫌悪すらもした。
やがて苦しみ悩みぬいた果て、恵茉はひとつの考えにいたった。
〈自分も成人すれば、誰にも文句を言われない〉
二十歳まであと六年。それでも変わらず晴之を想っていられたなら、この気持ちを打ちあけてみようか。それまでは、ひた隠しにして。
「で、アドバイスは?」
「しいていうなら美優ちゃんは夢中になりすぎるとこあるから、そこが心配かな」
慈愛あふれるまなざしに胸がざわめく。たとえそれが妹を見守るようなものであっても、晴之の真心が自分以外に向けられるのは耐えられない。カッとなって、心にもないことを口走ってしまう。
「晴くんも、そろそろ彼女つくんないとね。美優の心配ばかりしてないで」
内心泣きたくなる恵茉の横、晴之は少しばかり宙をあおぎ、のち、困ったように眉をさげる。
「そんな予定しばらくないと思う」
「好きな人いないってこと?」
「うまく言えないんだけど、まだ考えないようにしてるっていうか。恵茉は? 彼氏できたりしそう?」
「私も、そんな予定しばらくないよ」
「好きな人いないとか?」
「好きな人は……」
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