1.3 恵茉

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 憂鬱にさいなまれるにつけ恵茉は、屈託なく晃樹を好きだと言いきる美優が羨ましく、ときに妬ましかった。そして親友相手にそんなひどいことを思う自分を軽蔑し、嫌悪すらもした。  やがて苦しみ悩みぬいた果て、恵茉はひとつの考えにいたった。 〈自分も成人すれば、誰にも文句を言われない〉  二十歳まであと六年。それでも変わらず晴之を想っていられたなら、この気持ちを打ちあけてみようか。それまでは、ひた隠しにして。 「で、アドバイスは?」 「しいていうなら美優ちゃんは夢中になりすぎるとこあるから、そこが心配かな」  慈愛あふれるまなざしに胸がざわめく。たとえそれが妹を見守るようなものであっても、晴之の真心が自分以外に向けられるのは耐えられない。カッとなって、心にもないことを口走ってしまう。 「(はる)くんも、そろそろ彼女つくんないとね。美優の心配ばかりしてないで」  内心泣きたくなる恵茉の横、晴之は少しばかり宙をあおぎ、のち、困ったように眉をさげる。 「そんな予定しばらくないと思う」 「好きな人いないってこと?」 「うまく言えないんだけど、まだ考えないようにしてるっていうか。恵茉は? 彼氏できたりしそう?」 「私も、そんな予定しばらくないよ」 「好きな人いないとか?」 「好きな人は……」
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