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おやすみ作戦
「あれだ」
「お!見えてきたな。長い道のりだったな」
「蒼く美しい星だ」
「ああ。なかなかにな。だが、奴らは美しく無い。見た目は我々と大差は無いが、生物的に美しく無い。データを見れば奴らのこれまでの悪の所業が嫌と言うほど見てとれるな」
「…。まぁ、データによると大気も海も陸もひどい有り様だよ。でも、それはまだ彼らが未熟で発展途上だからだろうな」
「とは言ってもだ。全くたかが数百年で良くここまで星を汚し壊せるものだな。感心するよ」
「…。おい、本当にこんな作戦を決行するのか?」
「当たり前だろ。今更何を言ってるんだ?」
「いや、だって名前からしないふざけていると言うか、変と言うか…、何かおかしいじゃないか…」
「“おやすみ作戦”か。まぁ、確かに俺も名前については如何なものかと思うよ。でも、この作戦の本質に名前なんてどうでもいいんだよ。お前もそれは分かっているだろ?」
「もちろんそれは俺も作戦内容は理解している。でも、実際にやるとなると、何とゆうか、こう、思う所があるとゆうか…」
「何だ、ビビってるのか?意外だな、お前みたいな“英雄”がこれしきの事にビビるとはな」
「いや、それとコレとは訳が違うだろ。それに俺はただ国の為にと信じて命令通りに戦い続けただけだ。その結果、周りが俺を“英雄”だの“救世主”だのと揶揄しているだけで、俺は何もそんな称号とか勲章の為に戦っていた訳じゃないよ」
「別に揶揄してる訳では無かろう。それ程にお前は我が国にとって謎の存在で、最大の脅威だったからな。お前のあの狙撃と擬態は俺の国の軍を震え上がらせていたんだから。停戦協定が結ばれて、情報が明るみになるまで、お前が僅か十三歳の子供なんて思いもしなかったんだからな」
「それは結果論だ。俺だって何度死を覚悟したことか…。現に停戦時には我が国のスナイパーは五ニ人しか生き残っていなかった」
「だが、そんな国と国が停戦して同盟を結び、敵どうしだったお前と俺とがこうして大仕事を行うわけさ。なかなかに感慨深いじゃないか」
「…。ああ、まあな。でもやはり、ここまでする必要が有るのかと俺は思うんだよ」
「なぁーに、たかが七十億ほどのホモサピ何とかいう野蛮で愚かな知的生命体を“永遠に眠らせる”だけじゃないか。戦場で五百億以上の敵を撃破して来たお前にしてみれば容易いものだろう?
それもボタン一つで我が国が開発したガス型細菌兵器が勝手に増殖して数時間でこの星全体に行き渡る。それでこの作戦は終わりさ。さ、ボタンを押す準備をしておけよ」
「…。ああ。士官殿の事は良く理解したよ」
“パンッ!”
二人乗りの小型宇宙船の中で乾いた音が響いた。そして彼は何事も無かったかのように母星の同盟国と通信を始めた。
「連絡ご苦労。お前から連絡があるという事はやはり今回もダメだったか」
「ええ。御国の士官さんは一星の住民を皆殺しにする事に躊躇するどころが、迷いなんて微塵も無かったですよ」
「これで九五人連続で失格か。もう、あのような無意味で残酷な戦争を繰り返さない為に、命の尊さを理解していて、と例え野蛮で愚かな知的生命体にも慈悲と情けをかけらる者を私の後継者にと思っているのだが…」
「まぁ、仕方ありませんよ。何千年も続いた戦争の経験者なのですから。それにまだまだ候補は居る。私もやり甲斐がありますよ」
「そうか。では戻り次第、次の候補にも“おやすみ作戦審査”を頼む」
「了解しました」
彼は報告を完了し、通信を終えた。そして宇宙船の目的地を母星にセットして自動運転に切り替えた。
「ふぁー…、アァァ…」
そして大きく伸びをして、あくびをすると、長い帰路を仮眠して過ごすのであった。終
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