秀介 お姫様に出会うまで

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香子は、8月18日の早朝、女の子を産み一に叶うと書いて、「いちか」と名付けられた。 ひとりじゃ大変だろうからと元看護師のシッター兼家政婦の前田さんを俺の金で雇って様子を教えてもらい、送ってもらった一叶の写真を見ながら、仕事の合間に鈴木一誠とか言う奴を探していた。 もしかしたら娘になっていた赤ちゃん。 一叶の写真を見ていると心が癒され、頑張ろうと思えた。 一方で鈴木一誠の所在はなかなか掴めず、職場からは追えなくなっていたので、学生時代から追うことにした。 それでも蜘蛛の糸並みの細い細い繋がり。 高校の卒業アルバムでもあれば、確認しやすいのだが、プライバシー保護を理由に出身高でもない俺が学校で見せてもらえる訳がなかった。 「誰か聖蘭出身の知り合いいないか。」 秘書課で書類仕事をしながら、周りにそれとなく聞いてみた。 「川田さん、急にどうしたんですか。」 常務秘書の永野さんが聞いて来た。 「ちょっと人探しをしているんだ。」 「で、その人が聖蘭なんですね。」 「そうなんだ。年は俺と一緒なんだ。」 「それなら、うちの姉が…」 思わず永野さんを抱きしめたくなった。 ダメ。だ、だめ。セクハラ案件になってしまう。 慌てて距離を取った。 「永野さんのお姉さんは、聖蘭の?」 「中学受験して聖蘭に入って、そのまま大学まで行っています。」 思い切ってお姉さんに卒アルを持って来てもらい、確認をする事にした。 「お礼は、食事で…永野さんも行きますか。」 「いいですか?」 「それはもちろん。」
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