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高階商事に入社して最初の2年は、営業部に配属された。
初めて持つ名刺を相手先に渡すだけでドキドキものだったが、自分が会社に貢献していると感じられるようになると仕事が楽しくなり、目指せ営業部のトップと頑張るようになった。
「川田、得意先回りか。」
「よぉ、柴原は戻りか。」
同期でライバル的な立ち位置の柴原は、仕事以外では気さくに話せるひとりで、よく2人で飲みに行っていた。
不思議なもので就職して仕事に夢中になると彼女を欲しいとも思わなくなり、向こうから誘われることもなくなり、俺って結構淡白だったんだと思うようになった。
それでも性欲がないわけじゃないから、バーで隣に座った女とたまにはワンナイトを楽しんでいないと言ったら嘘になるが…
そのまま営業で頑張って行くつもりだった3年目の春、いきなり秘書課に異動になり、しかも社長秘書になった。
社長は、愛妻家で秘書と言えど女性をそばに置けないと言い出し、ちょうど少し前に社内で話をする機会があった俺は一本釣りされてしまったようだ。
せっかくやりがいのある仕事だったのに取り上げられて拗ねていたのかもしれない。
俺は社長に対して言いたい放題。
嫌なら営業に戻せと言わんばかりの態度を取っていた。
ただ会社に不利益は被らせたくないから、主に頼りない社長のけつを蹴飛ばす事に力を入れていたが…
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