秀介 お姫様に出会うまで

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その頃、高階社長の一人娘の香子は高校三年生だったと思う。 とにかく娘に甘々な社長に頼まれて、プレゼントを届けたり車で送迎したり… 高飛車ではないが、世間知らずなお嬢様に振り回されるのが不本意でどんどん口が悪くなり、お嬢様と呼びながらもぞんざいに冷たく接するようになっていた。 俺の給料はお嬢様が出しているわけじゃないし、拘束時間がとんでもないから態度が悪かろうが気にしなかった。 自分から誰かを好きになった事などなかったから、大切にしようとか優しくしようなんて思えたのは、昔、実家で飼っていた犬のナナくらいで女の子に優しくする気持ちもやり方もわかっていなかったのかもしれない。 もっとも香子の方も俺が苦手なのか、会うとあからさまにいつも嫌そうな顔をしていたが。 一時は、社長におもねらないこともあり、秘書としてのレベル以上に高階家に関わらされている俺を婿に迎えて高階を継がせようという話もあったようだが、一生この社長や奥様とお嬢様に仕える気は無かったから丁重にお断りさせていただいた。 そんな香子に縁談が舞い込んだ。 お相手は、笠松かずまと言うらしい。 漢字はボンクラ社長が、ド忘れして分からないが、普通は読めないと言っていた。 まぁ俺には関係ない話だ。 香子が、婿を取らないなら会社のトップは、社員の中から選ばれるのだろう。 俺にもチャンスはあるだろうか。
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