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「とにかく私は会った事もないまま、結婚しようと言うのが嫌なんです。」
「しかし笠松くんは今、海外赴任中で忙しいらしく来年の1月まで帰国は難しいらしい。しかも会社の機密に関わる案件らしく、こちらから訪ねていくわけにも。」
「いまはテレビ電話とかあるじゃない。直接じゃなくても、私は大学卒業してお稽古以外空いているのよ。」
「笠松くんは無愛想なので直接会わないとお前に嫌われてしまうと心配しているそうなんだ。」
いや、そんなことより、この状況を終わって欲しい。
「とにかく私は恋もしないまま、いきなり結婚なんて嫌です。あ、それなら笠松さんが帰国するまでに私が好きな人が出来て、プロポーズされたら、笠松さんにお断りしてその人と結婚していい?」
「いや、それでは…」
仕方ない。
ひとつ思いついた事を提案した。
「社長、いいじゃないですか。期限は結婚式の準備もあるでしょうから、半年後の11月末まで。その間は高階の財力に頼らず自活するってことで。」
「いや、川田。」
「いいですね。お嬢様はひとりで生活出来なきゃ、帰ってくればいいんですよ。」
「分かったわよ。やってやるわ。」
香子は俺の提案にのり、期間限定の自由であり、不自由な生活を手に入れたのだった。
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