みみたぶ

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 そうして学校に行こうと家を出た時だった。  身体がふわふわ軽くなっていた。ためしに走ってみると、びゅん! たっくんの足は車を追い越し、あっというまに小学校に着いた。  クラスで一番のりだった。  後から教室に入ってきた友達のよしおが肩を叩いた。 「今日のたっくん、どうしたんだよ。見たよ。めちゃめちゃ足が速かった」  たっくんはほめられて、ほっぺが熱くなった。 「耳たぶが大きくなったからだよ」 「あれ、そういやたっくんの耳たぶ大きくなってる」  よしおはたっくんの耳を見てびっくりぎょうてんした。  みんな学校に来て、朝の会が終わって。  毎週やる漢字テストがはじまった。たっくんは、苦手な勉強の中でも漢字テストが一番できなかった。いつも0点。たっくんは緊張して解答用紙をめくった。 「あれっ!?」  たっくんは思わず声をあげた。たっくんの頭の中に次々と漢字が浮かんできたのだ。頭の中の漢字をそのまま解答用紙に書き込んだ。    答えあわせの時間。解答用紙をとなりの席の菅井くんと交換した。菅井くんはびっくりぎょうてん。 「すご! たっくん100点満点だよ!」  クラスのみんながたっくんの席に集まってきた。 「すごいねー」 「がんばったんだね!」  その中にルミちゃんの姿もあった。たっくんの胸はどきどきした。 「耳たぶが、大きくなったからだよ」  たっくんは言った。  みんな、次々とたっくんの耳たぶに触った。くすぐったかった。ルミちゃんがたっくんの耳たぶをふにっと触ると、たっくんは心までくすぐったくなった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加