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そうして学校に行こうと家を出た時だった。
身体がふわふわ軽くなっていた。ためしに走ってみると、びゅん! たっくんの足は車を追い越し、あっというまに小学校に着いた。
クラスで一番のりだった。
後から教室に入ってきた友達のよしおが肩を叩いた。
「今日のたっくん、どうしたんだよ。見たよ。めちゃめちゃ足が速かった」
たっくんはほめられて、ほっぺが熱くなった。
「耳たぶが大きくなったからだよ」
「あれ、そういやたっくんの耳たぶ大きくなってる」
よしおはたっくんの耳を見てびっくりぎょうてんした。
みんな学校に来て、朝の会が終わって。
毎週やる漢字テストがはじまった。たっくんは、苦手な勉強の中でも漢字テストが一番できなかった。いつも0点。たっくんは緊張して解答用紙をめくった。
「あれっ!?」
たっくんは思わず声をあげた。たっくんの頭の中に次々と漢字が浮かんできたのだ。頭の中の漢字をそのまま解答用紙に書き込んだ。
答えあわせの時間。解答用紙をとなりの席の菅井くんと交換した。菅井くんはびっくりぎょうてん。
「すご! たっくん100点満点だよ!」
クラスのみんながたっくんの席に集まってきた。
「すごいねー」
「がんばったんだね!」
その中にルミちゃんの姿もあった。たっくんの胸はどきどきした。
「耳たぶが、大きくなったからだよ」
たっくんは言った。
みんな、次々とたっくんの耳たぶに触った。くすぐったかった。ルミちゃんがたっくんの耳たぶをふにっと触ると、たっくんは心までくすぐったくなった。
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