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弟のカっちゃんは、きゃっきゃと笑い声をあげて、たっくんの耳たぶをひっぱった。耳のつけ根がキーン痛くなって、たっくんはカっちゃんのおでこをぺちんとぶつと、家をとび出した。走って走って、そのたびに胸の上を、引きのばされたモチのような耳たぶがゆさゆさ揺れる。耳たぶが邪魔をして、上手く走ることができなくて。通りすがりの男の子たちが
「耳たぶおばけだ! へんなの!」
と指を差して笑った。たっくんはもう目に涙をいっぱいためながら走って、とうとうスッテンコロリンと転んでしまった。顔を上げると、そこはたっくんが耳たぶを大きくしてくださいとお願いした、小学校のとなりの神社の前だった。
「よわったなあ、どこいっちゃったかなあ」
さいせん箱のそばで声が聞こえた。見ると、一匹の白い狐が頭をかかえていた。
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