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白い狐はたっくんを見てパッと顔が明るくなった。
「あー! ありました!」
白い狐はたっくんのふたつの耳たぶをひっつかむと、にゅっと勢いよく引っ張った。鋭い痛みがたっくんの身体中に走った。
「いたっ」
びりい
長い耳たぶはずりっと抜けた。おそるおそる触ってみると、血は出ていなくて、たっくんの耳たぶは元に戻っていた。長い耳たぶの切れ端は、狐がしっかり握っている。
狐はほっと息を吐いた。
「いやぁ。実は、神仏交流の際、お釈迦様へプレゼントする耳たぶを、間違えてニンゲンに渡してしまって……、そのニンゲンを探してました。見つかってよかったよかった」
狐はぺこりとお辞儀をすると、さいせん箱の中にすいこまれるようにして消えた。
元の耳に戻ったたっくん。もちろん足はみるみる遅くなり、漢字テストも0点になった。
だけど……、
「わたし、こっちのたっくんの耳たぶ好きよ」
ルミちゃんと、とても仲良しになった。ルミちゃんの声を聞くと、もとに戻った耳たぶがクスクスくすぐったかった。
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