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本日は近所の川沿いにて花火大会。今年のバレンタインにて、晴れて彼氏と彼女の関係になった幼馴染の彼と二人で。 そう、二人で! 花火を見に行こう、ということになった。
普段とは違う自分の浴衣姿に顔を赤くする彼。 二人して屋台を練り歩いて満喫し、そこに花火が上がって周りの雑音が全てかき消される。
夜空に映える大輪の花にすっかりみとれている自分の腕を、彼はそっと握ったかと思うとグッと引いてきた。 少し驚いて振り向いたらそのまま―――
「なーに自分の世界に浸ってやがる」
隣の彼に後頭部を軽くはたかれた。
「えぇ……こうだったらいいのにな、という妄想をですね、その」
「るせえよ、現実を見ろ現実を! 俺もお前も部活帰り、家に鞄だけ置いてそのまま直行だろ。
……おう、佐藤。 お前も来てたのか、あ、こんばんは」
こらこら、家族で来ている佐藤くん。 私の刺すような冷たい視線に気がついたのなら、早々に立ち去るがいい。
仕方ない、平日の花火大会なのに外出許可をくれた親にむしろ感謝……いや、幼馴染同伴だからOKが出たのだろうけれど。
花火大会といっても、そんなに知名度の高い豪勢なものでもない。 屋台も申し訳ない程度にチラホラ出店しているくらいだ。
始まるまでのお腹の足しに、コンビニでパンとジュースを買った。 帰ったら普通に晩ご飯が待っているから、屋台練り歩きなんて豪遊は出来ない。
それに、案外お互いの知人が多い……こんな状況下でロマンチックなことを望むほうが間違いだろう。
そうこうしてる間に、一発目があがる。 続いてどんどん打ち上げられ、自分も彼も空に目が釘付けになった。
「すっごい、綺麗ー! あ、見た見た? あの形綺麗くない? ……おっき―――い! わー! 綺麗―――!」
「……あぁ、もう……」(小声)
「ひゃ―――! 降ってくるみたいー! あ、まだ上がるよ、ほらほら、わー! 凄―――い!」
……帰り際、彼は黙ってジュースを奢ってくれた。 ありがとう、喉カラカラだわ……。
自分はすっごい楽しかったけれど……彼は楽しかったのかな?
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