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一、戦いの幕開け 1
「行って来ま~す。」
春の陽光が降り注ぐ庭に、一条奈美は元気よく飛び出していった。その後ろから、暖かい眼差しをした兄、亘が現れた。
「行っといで。気をつけるんだよ。」
奈美は、手を振りながら雑木林に囲まれた小道を駆けて行った。亘はその後ろ姿を、ある思いに捕らわれながらしばらく眺めていた。
「いつまでも、このままでいてくれたらいいんだが…」
亘の目が一瞬悲しげな色に変わる。しかし、すぐに自分の口から出た言葉を打ち消すように頭を振った。
「バカな。いつまでもこのままじゃあないか。」
亘は苦笑を浮かべ、ゆっくりと家の中に入っていった。
その亘が家の中に入るのを待っていたかのように、一人の男が木の陰から現れた。
サングラスをかけた長身の男だ。
男はゆっくりと家の前に近づくと、サングラスの奥に光る目を表札に向けた。
「やっと見つけたぞ。」
男が口元に笑みを浮かべると、ポケットに突っ込んだ左手を出し、傍らのチャイムのボタンを押した。
家の中にもどった亘は、ソファに腰をかけて、読みかけの本を手に取った。
その時、チャイムが鳴った。
「誰だろう?」
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