一、戦いの幕開け  2

2/6
前へ
/301ページ
次へ
 亘は奈美に向かって、あらん限りの声で叫んだ。  いきなり飛び出してきた亘を見て、奈美は驚いた。  「どうしたの、兄さん。」  奈美は訳もわからず、その場に立ちつくした。  その時、木の陰に隠れていた二人の男が、奈美と亘に向かって走り出してきた。  一方の男が奈美を捕まえようと右手を伸ばしたとき、その前に亘が立ちはだかった。  「ツァッ!」  鋭い気合いとともに、亘の爪先が男の腹部にめり込んだ。  「グェッ!」 うめき声とともに胃液を吐き出して、男はその場に(うずくま)った。  そのすぐ後ろに別な男が亘に襲い掛かってきた。右手には鋭く光るナイフが握られている。  亘の眉が釣り上がった。  「奈美、逃げろ、逃げるんだ!」  奈美にそう叫びながら、亘の目は迫る男に集中していた。  「シャッ!」  男のナイフが亘に向かって真っ直ぐ伸びた。その瞬間、亘の体は男の右側に移動し、右手で凶器を受け流しながら、亘の左肘が相手の右脇腹に鋭く食い込んだ。  「ゲェッ!」  その一撃で相手の動きが止まった。その間に亘は相手の右腕を後ろに捻り上げて、その背後にまわった。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加