12人が本棚に入れています
本棚に追加
亘は奈美に向かって、あらん限りの声で叫んだ。
いきなり飛び出してきた亘を見て、奈美は驚いた。
「どうしたの、兄さん。」
奈美は訳もわからず、その場に立ちつくした。
その時、木の陰に隠れていた二人の男が、奈美と亘に向かって走り出してきた。
一方の男が奈美を捕まえようと右手を伸ばしたとき、その前に亘が立ちはだかった。
「ツァッ!」
鋭い気合いとともに、亘の爪先が男の腹部にめり込んだ。
「グェッ!」
うめき声とともに胃液を吐き出して、男はその場に蹲った。
そのすぐ後ろに別な男が亘に襲い掛かってきた。右手には鋭く光るナイフが握られている。
亘の眉が釣り上がった。
「奈美、逃げろ、逃げるんだ!」
奈美にそう叫びながら、亘の目は迫る男に集中していた。
「シャッ!」
男のナイフが亘に向かって真っ直ぐ伸びた。その瞬間、亘の体は男の右側に移動し、右手で凶器を受け流しながら、亘の左肘が相手の右脇腹に鋭く食い込んだ。
「ゲェッ!」
その一撃で相手の動きが止まった。その間に亘は相手の右腕を後ろに捻り上げて、その背後にまわった。
最初のコメントを投稿しよう!