最新AI マッチンGood〜♪

　まず初めにマッチングアプリのデータ開示を許可すると、驚くほどの速さで主要6項目とされている、顔、体型、年齢、仕事、趣味、性的ポジションについて自分が普段好ましいと思っているタイプの分析結果が表示される。たとえば顔のタイプは今まで好意を持った相手の平均顔のようなものが表示されるのだが、確かに自分の好きなタイプではあった。年齢については、熱心にマッチングアプリを使用していた5年前のデータを元に算出されていた事もあり幾分若く感じたが、調整はできた。次にこの主要6項目が六角形のグラフで表され、6項目の中で自分がより重視したい項目の頂点は六角形のキワまで伸ばし、反対にそこまで重視しない項目の頂点はグラフの中心部に持っていく。但しマックスまで重視することが出来るのは3項目だけなので、限りなく六角形に近い形にすることはできるが、完全な六角形には出来ない仕様だった。頂点を伸ばしたり短くしたりを繰り返して自分だけの歪な六角形を作り上げていく作業がしばらく続く。好きになったら体型は多少崩れてもそこまで気にならないけど、その分顔は重視したい。改めて列挙されてみて思ったが、恋人に求める条件として、6項目は少ない。ただ、所詮マッチングアプリに記載されているデータを元に推測できる項目なんてこの程度しかないのもわかる。その人の声や匂いはわからないし、趣味や体型、年齢などは自己申告に過ぎなくて、顔だって加工はいくらでもできる。相手の申告データが信用できる事が大前提のシステムなのだろう。
　早くもこの最新AIの限界を感じ始めてはいたが、払っている金額を考えればそんなものかと諦めもつく。あとは検索範囲を設定すれば、晴れて結果表示となる。それでも、主要6項目以外にも重視したい項目を追加するオプションは用意されていて、150円を追加で課金すれば最大6項目を追加でき、グラフを12角形にまですることができた。正に運営側の思う壺な気がしたが、トータルで500円と考えたら、眉一つ動かさずに課金ボタンを押していた自分がいた。
　課金ボタンを押すと、最初は表示されなかった注意書きがポップアップで大きく表示される。
　「項目を増やす程運命の相手の結果人数は減っていきますのでご了承下さい」
　なるほどそれは当然の事だった。ただ次のメッセージには少し違和感を持った。
　「ただし、結果が0人という事はありませんのでご安心下さい」
　根拠があるのかはわからないが、随分自信があるようだ。しかし僕は、好き放題な要望を提示しても、この世界に最低1人は自分の運命の相手がいると保証されたような気がして、生温い安堵を覚えたのも事実だった。