最新AI マッチンGood〜♪

　和哉が上海に赴任して2ヶ月ほど経ったある日、「マッチンGood〜♪」のサービスを運営していた会社が摘発されたというニュースが報道された。なんでもこのサービスはマッチングアプリの利用データを抜き取ることが第一目的の悪質なサービスで、運命の相手として表示される結果の殆どは業者によるサクラアカウントであり、一定期間やり取りをすると有料のサイトに誘導されるという、いわば古典的なやり口の詐欺業者だったのだった。広告キャラクターとして採用されていた女性芸人までもが反社会的勢力との繋がりを噂されて謝罪に追い込まれていた。
　よくよく考えてみると、自分のマッチングアプリの利用実績のデータ利用を許可すれば、自分の趣味嗜好の傾向が把握できるのは当然だが、「自分に興味を持つ可能性のある自分以外のユーザー」という相手側の趣味嗜好を用いなければ弾き出せない情報まで取得できるはずは無いのだ。仮に出来ていたとしたらそれはユーザーの同意無しに不正に取得された利用実績データを元に算出されていたに過ぎない。そんな事にも頭が回らないくらい、当時は不安だったのかもしれない。
　この事を今日起きた出来事として、毎日21時からのビデオ通話の時間に和哉に話すかどうかはまだ決めていない。あのサービスを利用した事自体をまだ彼には話していないからだ。けれど500円分のインターネットショッピングのギフト券は彼宛に送っておこうと思う。急にどうしたの？と聞かれたら、「気が向いたから」とでも答えておこう。