8人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなある日、継母は灰かぶりに言いました。
今日は、城で舞踏会が行われる。兄たちはそこで結婚相手を探すので、お前のようなモノは存在してはならない。お前は今日、この部屋から出ては行けないよ。
灰かぶりは悲しみます。舞踏会に行きたかったからではありません。舞踏会へ行けば、幼い頃ともに遊んだ"少年"に会えるかもしれなかったからです。
まだ母が生きていた頃、灰かぶりは城へ行ったことがありました。そして、城で知り合った男の子と結婚の約束をしていたのです。結婚、という約束は無かったことになっても、再会すれば何が変わるはずだと思っていた灰かぶりは涙を流します。
どうかあの方とまた会わせてください。ロケットを握りしめ、そう祈ると、なんとロケットが光りだし、魔女が現れました。灰かぶりは驚きます。
「心優しく、美しい少女よ。お前の望みを叶えてやろう。何が望みだい?」
怪しい美しさをもった魔女は艶然と微笑みます。
「舞踏会へ行って、あの方に会いたいです…っ!」
「良いだろう。では、蕪ひとつと、どぶねずみ1匹、かえるを2匹捕まえておいで。」
灰かぶりは言われた通り、蕪とねずみとかえるを用意しました。魔女が呪文を唱えると、蕪は立派な馬車へ、ねずみは馭者かえるは馬へと変化しました。
「その服じゃあ、行けないねぇ。ほら。」
魔女が杖で服に触れると服は美しいドレスになりました。
「この魔法は、12時には消えてしまうからね。それまでに戻っておいでよ。」
魔女はそう言って灰かぶりを見送りました。灰かぶりは魔女に感謝して12時までには必ず帰りますと誓って、舞踏会へ向かいました。その裏で魔女が嘲笑っていることには気づきもしませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!