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私を殺しそうな
「 ぇ?」
意味不明だって感情が分かりやすく彼の声に滲む。
その気持ちは、よく分かる。
私にとっても意味不明だ。
「その、どういうこと?」
「…最初に断言しておくんだけど、別に君が嫌いになったとかじゃないよ。
全くもって君は悪くない。その上で伝えたいことがあって」
君はこんな話でも聞いてくれる。こんな最低な話を。
「前みたいに君と触れたいとか、今何してるとか、いつのまにか考えなくなった。思考の殆どを君が支配していたはずだったのに」
「もちろん君と一緒にいるのは楽しいし、できれば笑っていて欲しい。
でもこれは好きとかとは、違う気がしてて。
言葉が急いだぶんを取り戻すように、沈黙が生まれる。
でも気まずくはない。
君が私について、話について真面目に考えてくれているから。
そして、君が息を吸う。
「もしかして、これって別れ話なの」
予想はしていた話題だった。
とても迷ったことだった。
「違う、違うんだけど」
「あの、私まだあなたといたいの。だから、
どうしたらまた君を好きになれるか、一緒に探して欲しいの」
意味不明二号、登場。でも何か答えて欲しい。
今度は私が沈黙を生む。
虫のいい私の言葉への
君の言葉を待っていた。
「あのね、えっと。俺はまだ君のこと大好きで、それで」
「そっか、…うん、そっか」
「急に好きじゃなくなったとか言われて悲しいし、正直わけわかんなくて」
「だよね、ごめん」
「いや、大丈夫。なんだけど、そのー…」
「うん」
「もう一度俺を好きになろうとしてくれてるのは嬉しい。
だから俺は、そのもっかい好きになる方法を探すっていうの?手伝うよ」
「…え、本当に?」
なんて言葉では驚いてみるけど、本当は予想していた答えだった。
優しい君はまだ私を好きだから。
罪悪感が私の心臓を鷲掴んで、痛い。
君の優しさが呪いに形を変えて、私を殺しそうだ。
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